2026年5月19日

SGLT2・GLP-1製剤と内視鏡検査の注意点
糖尿病は消化器がんのリスク因子です。安全に内視鏡検査を受けるために、服用中の薬と検査の関係を知っておきましょう。
2024年の糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病患者さんに対する消化器がんスクリーニングの重要性が改めて強調されています。胃がんや大腸がんの早期発見には内視鏡検査が不可欠ですが、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を内服中の方には特別な注意が必要です。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬は胃の動きを遅くする作用があり、検査前に十分な絶食をしていても胃の中に食べ物が残っている可能性があります。これは検査の視野を妨げるだけでなく、鎮静下での誤嚥リスクを高めます。そのため検査前の休薬が推奨されています。
SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬については、絶食時のケトアシドーシス(血液が酸性に傾く状態)や脱水のリスクが懸念されます。海外ではASGE(米国消化器内視鏡学会)が2025年に厳格な休薬基準を示しましたが、これは外科手術レベルの基準であり、外来内視鏡検査にそのまま当てはめるべきかは議論が続いています。
日本の現状
日本消化器内視鏡学会(JGES)はGLP-1製剤については休薬を推奨していますが、SGLT2阻害薬についてはまだ明確な指針が出ていません(2026年2月時点)。検査を受ける際は、必ず主治医に服用中のお薬をお伝えください。
おわりに

消化器内科の日常診療から見えてくるのは、脂肪肝を中心としたメタボリックシンドロームの連鎖です。SGLT2阻害薬は血糖コントロールと同時に肝臓の脂肪を減らし、肝機能を改善する多面的な効果を持つ、消化器内科医にとっても重要な治療選択肢です。そして、糖尿病治療薬を服用しながら内視鏡検査を受ける際には、休薬のタイミングなど適切な対応が欠かせません。主治医との相談を怠らず、安全に検査を受けましょう。
この記事の内容は、医師の講演内容をもとに一般の方向けに編集したものです。個別の診断や治療については、必ずかかりつけの医師にご相談ください。
【引用文献】
1. 日本糖尿病学会編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
2. ASGE (American Society for Gastrointestinal Endoscopy). Position Statement on the Management of GLP-1 Receptor Agonists and SGLT2 Inhibitors Prior to Endoscopy. 2025.
3. ASA (American Society of Anesthesiologists). Consensus-Based Guidance on Preoperative Management of Patients on GLP-1 Receptor Agonists. 2023 (updated 2024).
4. ADS/ANZCA (Australian Diabetes Society / Australian and New Zealand College of Anaesthetists). Peri-operative Management of GLP-1 Receptor Agonists. 2024.
5. AGES (Australasian Gastro-Intestinal Endoscopy Society). Guidance on GLP-1 RA and Endoscopy. 2024.
6. Agrawal S, et al. Residual gastric content on esophagogastroduodenoscopy in patients on GLP-1 receptor agonists. Br J Anaesth. 2019.


